理事長ご挨拶 > HOME


 人間はなぜ生き残ったのかの答えの一つに、集団で生きることを選択したことをあげる学説があります。鋭い牙も爪も、強い筋肉も持たない人類は、個体としてではなく、類として生きることを選択した。そのことで、人間は淘汰されずに生き残ることができたというのです。言語をはじめ、婚姻や生産物の交換などにかかわる諸制度は、共同して生きる人間のあり方をより強化するために組織されてきたものです。マルクスの「人間は類的存在である」という言葉は、人間としてのデフォルト(初期設定)は共同して生きていくことであるということを端的に述べたものではないでしょうか。
 20年来この国では、アメリカ発の新自由主義的な「改革」が進められ、「経済成長」という謳い文句とは裏腹に、不払い残業を含む長時間過密労働が蔓延し、人間らしく働くルールの破壊がすすんでいます。それは同時に、共同で生きてきた人類の歴史に背いて、社会から切り離され、孤立した「個」として生きることを人びとに強要するものでした。
 こうした情勢の下、私ども埼玉県労働者福祉共済会(埼労共)は、「働く者の暮らし丸ごと支援」をめざすシステムとして、2005年6月に発足しました。埼玉県労働組合連合会(埼労連)11万人の組合員を母体にし、労働組合を持たない多くの県内労働者の暮らしの改善にも貢献できる事業を積極的に創造していこうと努めています。
 また、国連は、「協同組合がよりよい社会を築きます」をスローガンに2012年を国際協同組合年としました。協同組合がもたらす社会経済的発展への貢献、特に貧困削減・仕事の創出・社会的統合へ果たす役割は、国際的にも注目されています。
 埼労共は、戦後日本の労働運動の生み出した労働組合の協同金融機関である「労働金庫」や「全労済」・「全労連共済」、消費生活協同組合や医療生活協同組合などの成果を共有し、フードバンク運動、給付制奨学金を求める運動などにも積極的に参加しながら、埼労連の組合員ばかりでなく、正規・非正規を問わず、労働組合を持たない多くの働く仲間の生活支援に貢献しています。
 県内各位の皆様のご理解とご支援をよろしくお願いするとともに、1人でも多くの働く仲間の賛同と参加をよびかけます。

埼玉県労働者福祉共済会 理事長 伊藤 稔